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運命の一目惚れ──映画『マチネの終わりに』レビュー

映画『マチネの終わりに』は、
たった3度しか会ったことのない二人が、
運命に翻弄されながらも魅かれあっていく6年間を描く物語。

華やかさよりも静けさが、
劇的な展開よりも余白が、
ふたりの心の深さを静かに浮かび上がらせていく。

目次

物語の気配 

天才ギタリストの蒔野聡志。
世界を飛び回るジャーナリストの小峰洋子。

彼らの関係は、出会った瞬間からどこか特別だった。
しかし、洋子には婚約者がいて、それぞれの生活は離れた場所で続いていく。

距離や時間がふたりを遠ざけながら、
それでもどこかでつながり続けてしまう感情──。

一度か二度としか会っていない相手を、
ずっと思い続けることはできるのだろうか。

簡単には答えが出ない問いを、
映画は静かに投げかけてくる。

Sixth Sense|心に触れた3つの瞬間

❶ パリの街で洋子がふと見せた横顔

まだ関係が深くなる前の、静かな時間。
約束のレストランに向かうために歩く洋子は、
観光地の喧騒ではなく、日常のパリの空気を軽やかに纏っていた。

風に揺れる髪、
昼下がりのやわらかな光、
ふと見せる横顔。

大げさなドラマではないけれど、
その一瞬の表情に、
“あ、この人を大切に思ってしまう理由”
静かに宿っているように感じられた。

❷ ギターの音に重なる、言葉にならない静けさ

蒔野がギターを奏でるシーンは、
音楽そのものよりも、
その前後に流れる“静けさ”が印象に残る。

緊張でも、期待でもない、
誰も触れない透明な空気が
ふたりの間でふわりと揺れていた。

福山雅治さんが撮影のために練習を重ねた演奏は、
技術だけではなく、
蒔野という人物の“不器用な感情”そのものに見えた。

派手ではないのに、
なぜか心に残る。
あの静けさこそ、この映画ならではの余韻だと思う。

❸ パリの昼のレストランで交わされる、率直な一言

パリでの二度目の再会。
昼間のレストランという日常の場で、
蒔野はためらいなく率直な想いを伝える。

遠回しな言い方ではなく、
大人の恋愛には珍しいほどの素直な言葉だった。

まだ数回しか会っていない相手に向けられた言葉としては、
驚くほどストレートで、
理屈では説明できない感情の動きがそこにある。

常識だけで考えれば無謀ともいえるが、
映画の中ではその瞬間だけが自然に見える。
ふたりのあいだにある“確信のようなもの”が
淡く光った場面だった。

作品の空気を感じられる公式予告編はこちら。

キャストがつくる“静かな美しさ”

映画版『マチネの終わりに』は、
派手さよりも、役者たちの“佇まい”や“気配”が印象に残る作品です。

蒔野聡志を演じる福山雅治さんは、
世界的ギタリストという難しい役どころを、
言葉少なめの表情や静かな間で自然に表現していました。
演奏シーンの説得力もあり、蒔野という人物の内側が静かに滲むようです。

一方、洋子を演じる石田ゆり子さんは、
強さとやわらかさを同時に持つ女性像を、
無理のない形で体現していた印象があります。
控えめな微笑みや、相手の言葉を受け止める姿勢に、
洋子というキャラクターの品の良さが感じられました。

ふたりの佇まいが、作品全体の“余白の多い世界”と
ほどよく響き合っているように思います。

著名人のコメント

リリー・フランキー

人が百年生きるのだとしたら、
妥協と惰性で生きる百年は、ただ、ただ長い。

「想い」を抱き、ロマンチストと笑われようとも
思い続ける人生は、百年が一瞬に瞬き、
きらめく。

これほど美しく、
その瞬間を切り取った映画は他にはない。

ロバート・キャンベル

人生半ばにして揺らぎだす自信も、
歳月の上に爪先立つ欲望も、
繊細に美しく描き出されている。

影が差す静かでもどかしい佇まいの
石田ゆり子扮する小峰洋子から、
一瞬も目が離せなかった。

時間が止まったようで、
見終わった今でも
音楽が甘く切なく流れ続けている。

Sophia’s Note

映画を観終わったとき、
すれ違いの切なさよりも、
“心が動いた瞬間は簡単には消えない” という感覚が静かに残りました。

人との出会いには、
理由のわからない確信が芽生えることがあります。
これまでの経験や状況では説明がつかないのに、
どうしても心が向いてしまう。
そんな不思議な惹かれ方です。

映画『マチネの終わりに』は、
その “言葉にならない感情” を
大げさにせず、丁寧に描いている作品だと思います。

派手な展開はないけれど、
一つひとつのシーンに余白があって、
観る人の年齢や経験によって
見える色が変わるような映画。

それこそが、この物語の魅力なのかもしれません。

ぜひ観てください。

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作品の余韻に浸りたい方には、
静かな時間にもう一度見返せる Blu-ray がおすすめです。
映像の美しさも音の深さも、じっくり味わえます。

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